再就職手当とは、失業手当を受ける資格がある方が「安定した職業に就いた」場合に支給される手当です。
支給される金額は残日数の70%もしくは60%を一時金として受け取ることができます。
ここでは、再就職手当の要件や金額、手続き、Q&Aについて詳しく説明致します。
■目次
再就職手当とは
再就職手当はハローワークにて雇用保険(失業保険)の手続きした後に早期に就職が決まった場合に支給される手当です。就職予定日の前日時点で「残っている給付日数」がまだ全体(所定給付日数)の3分の1以上あれば支給されます。
せっかく失業保険がもらえるのだから全部受け取らなければ損と感じている方もいるかもしれません。
そうならないために「再就職手当」があります。就職日までに残った日数の70%もしくは60%を受け取ることができます。
早期に仕事が決まってもまったく損ということはありません。
ただし再就職手当を受け取るには一定の要件がありますので、その要件に該当する方が対象です。
再就職手当で支給される金額
再就職手当で支給される額は以下の式で計算します。(平29年1月1日より改正)
基本手当日額×支給残日数×60%または70%
※支給残日数とは、就職日の前日に後どれだけ支給が残っているかの日数です。
※所定給付日数とは、失業保険の申請後に渡される「雇用保険受給資格者証」の項20に記載されている日数です。どれだけの期間(日数分)失業保険を受け取ることが出来るのか記載しています。
再就職手当の支給金額例1
以下の条件の場合
・給付制限なし
・給付日数180日
・基本手当日額:5000円
・3/31日会社都合退職
・4/16日手続き
・6/1より就職先へ入社
まず支給開始日を計算します。
4/16日から4/22までは待機期間7日
実際の支給開始日は4/23です。
支給開始日から就職日前日までの日数を計算します。
4/23~5/31までの分を計算すると失業手当の支給は39日間。
所定給付日数より受け取り期間を引きます。
180-39=141日
180日に対して141日なので120日以上は残っています。
120日以上(3分の2以上)残っているので支給率は70%と算出されます。
実際の支給は「5000×141日×70%=493,500円」です。
上記の割合を見てもらうと、早期に就職した方がより高い給付率になります。
再就職手当の支給金額例2
以下の条件の場合
・給付制限あり
・給付日数90日
・基本手当日額:5000円
・3/31日会社都合退職
・4/16日手続き
・6/1より就職先へ入社
まず支給開始日を計算します。
4/16から4/22までは待機期間7日
4/23から7/22までは2ヵ月の給付制限期間
実際の支給開始日は6/23からです。
上記の場合、給付制限期間中に就職しています。
そのため、1日も失業手当を受け取っていません。
その場合は残90日、70%の支給率です。
実際の支給は「5000×90日×70%=315,000円」です。
※2020年(令和2年)10月1日より、正当な理由がない自己都合により退職した場合であっても、5年間のうち2回までは給付制限期間が3か月から2か月へと短縮されました。
再就職手当が支給される条件
以下の8つの条件を満たす方が対象になります。
- 手続き後7日間の待機期間が終了していること
- 失業手当(基本手当)の支給残日数が3分の1以上残っていること(就職日前日まで)
- 就職先が離職前の会社と関係ないこと
- 給付制限2ヶ月ある方は、最初の1ヶ月目はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介であること
- 再就職先で1年以上の雇用が見込めること
- 再就職先では雇用保険の条件を満たしていること
- 過去3年以内に再就職手当又は常用就職支度手当の支給を受けたことがないこと
- 失業保険手続き前から既に採用が決まっていた事業主に雇用されたものでないこと
それぞれ順に詳しく説明致します。
手続き後7日間の待機期間が終了していること
ハローワークへ失業保険の手続きした日から7日間は待機期間となります。
この待機期間は給付制限あるなしに関係なく全ての方が待機の対象です。
失業手当も再就職手当も最初の7日間(待機期間)は支給の対象にはなりません。
この7日間は「失業状態であることを確認」するための期間です。
ただしこの7日間に内定が決まった場合は特に問題ありません。
失業保険の支給残日数が3分の1以上残っていること(就職日前日まで)
再就職手当は、失業手当の支給残日数が就職予定日前日までにどれだけ残っているかが重要です。
就職予定日の前日の時点で、失業保険の支給残日数が総支給日数の3分の1以上残っている必要があります。3分の1以下であれば、再就職手当の申請はできません。
<給付制限がない場合の例>
所定給付日数が90日の場合、残日数が30日以上あれば再就職手当の要件に該当します。
90日の3分の1以上(30日以上)・・60%の支給
90日の3分の2以上(60日以上)・・70%の支給
(例)基本手当額5000円で残日数が60日の場合
5000円×60日×70%=210,000円の支給
<給付制限2ヶ月がある場合の例>
2ヵ月の給付制限がある方は、給付制限2ヶ月経過後から基本手当の支給が始まります。
それ以外の考え方は給付制限がない場合と同じです。
就職先が離職前の会社と関係ないこと
失業直前に勤めていた会社と関係がある就職先の場合は対象にならないことがあります。
資本・資金・人事・取引面で綿密な関わりのある会社です。
このような会社に再就職する場合は、社内やグループ関連会社内での異動、配置換えに近い位置づけとみなされます。そのため再就職手当は支給されません。
給付制限期間中の1ヶ月目はハローワークまたは職業紹介事業者であること
これは自己都合退職など給付制限2ヶ月3ヶ月がある方が対象です。
会社都合等で失業保険がすぐに受け取れる方は問題ありません。
※2020年(令和2年)10月1日より、正当な理由がない自己都合により退職した場合であっても、5年間のうち2回までは給付制限期間が3か月から2か月へと短縮されました。
ハローワークで失業手当の申請後、最初の7日間は待機期間です。
その後に給付制限2ヶ月となるのですが、その給付制限期間の最初の1ヶ月はハローワーク又は紹介事業者の紹介で就職した場合に限り再就職手当が支給されます。
給付制限2ヶ月の最初の1ヶ月間は新聞、雑誌、チラシの広告等で自ら応募して就職が決まった場合は支給対象にはなりません。インターネット求人も同様です。
もし最初の1ヶ月目で仕事が決まりそうな場合でハローワーク又は紹介事業者の紹介でなければ、就職日をずらしてもらうなど検討した方が良いかもしれません。
または失業保険や再就職手当は受け取らず、雇用保険受給期間を伸ばすということも選択肢もあります。
職業紹介事業者とは
ここでいう職業紹介事業者とは、転職エージェント等、就職を斡旋してくれる会社です。
代表的な事業者はリクルートエージェント等の人材紹介会社、人材バンク、人材コンサルタント等です。
注意しなければならないのは、インターネットの求人サイトを利用しての就職です。
エンジャパンやリクナビなどのインターネット求人サイトでは対象にはなりません。
求人サイトは求人情報を提供しているだけで、実際は本人と会社とでやり取りをしているからです。
ただ職業紹介事業者として登録しているだけではダメです。
パソナやテンプスタッフなどの日本の代表的な派遣会社は職業紹介事業者としても登録しています。
ですが一般的な派遣と職業紹介事業とは業務内容が異なります。そのため派遣で就職が決まった場合は再就職手当の対象とはなりません。
給付制限期間1ヶ月を過ぎて就職した場合は、どのような媒体でも再就職手当の対象になります。
再就職先で1年以上の雇用が見込めること
正社員として仕事が決まった場合は無期雇用なので問題ありません。
問題なのは契約社員や派遣社員、アルバイト・パートなどの非正規雇用の場合です。
継続して1年以上の雇用が見込めるどうか
契約社員で「1年間限定の仕事」であれば再就職手当の対象とはなりません。
ですが、1年を超えて再契約の可能性があるのであれば再就職手当の対象になります。
派遣社員の場合、3ヶ月ごとの更新がほとんどです。
それ以降は3ヶ月更新が続く契約内容になっているかと思います。
その場合は実際に1年以上働けるかはわかりません。
派遣の場合は契約更新の可能性があるかどうかです。
最初の契約以降、継続の可能性があるのであれば条件を満たすことができます。
3ヶ月契約(更新の可能性あり)は要件を満たす
3ヶ月契約(更新の可能性なし)は要件を満たさない
実際の判断はハローワークではなく派遣会社にて行います。
派遣会社が1年以上働く”可能性がある”と判断した場合は、再就職手当に必要な「再就職手当支給申請書」に見込みありと記入します。実際の契約の際に再就職手当の対象になるかどうか確認してみましょう。
再就職では雇用保険の条件を満たしていること
雇用保険に加入するための条件は以下の2つです。
雇用保険の適用要件
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 同一の事業所に継続して31日以上の雇用が見込めること
この2つの条件を満たしている方が対象です。
例えば週3日で1日4時間のパートタイムで就職が決まった場合は再就職手当は支給されません。
また就職にもなりませんので、継続して失業保険の基本手当を受け取ることができます。
会社によっては入社後の試用期間中は雇用保険に入れないということもあります。
ですが雇用保険の加入条件を満たしているのであれば再就職手当の支給については問題ありません。
過去3年以内に再就職手当又は常用就職支度手当の支給を受けたことがないこと
再就職日から3年以内に「再就職手当」または「常用就職支度手当」を受けている方は条件を満たしていても対象にはなりません。
※常用就職支度金とは、障害者(身体・知的・精神)または就職が困難な者が安定した職業に就いた場合に支給される手当です。
受給資格決定前から採用が内定されていた事業主に雇用されたものでないこと
受給資格決定とは、ハローワークに失業保険の手続きをした日のことです。
その日以前に、既に内定が決まっていた会社へ就職した場合は対象にはなりません。
そもそも就職先が決定している場合は失業保険の手続きを行うことはできません。不正受給の対象です。
再就職手当 手続きから支給までの流れ
再就職が決まったらハローワークへ連絡し失業認定の手続きに行く
再就職が決まった場合、まずはハローワークへ連絡しましょう。
ハローワークから○○日に手続きに来てください。と案内があります。
通常は就職日の前日にハローワークへ来所するように案内があります。
(月曜日が初出社であれば金曜日)
その際に、持参するものを確認します。
・雇用保険受給資格者証
・失業認定申告書
・採用証明書(後日でも可)
※提出する失業認定申告書には、就職が決まった事業所名と住所、電話番号を記入しましょう。
この日は再就職手当の申請ではありません。
就職日前日までの失業手当の手続きを行います。
この日が失業手当の最後の認定日になります。
入社前にハローワークへ行くことができない場合は、再度後日ハローワークに手続きに行かなければなりません。
そこで再就職手当に該当する方には「再就職手当支給申請書」が手渡されます。
■再就職手当支給申請書
就業先へ「再就職手当支給申請書」の記入を依頼する
再就職手当支給申請書を記入する際には、事業主の記入欄があります。
ここで必要な項目を記入してもらいます。
- 事業所名・所在地
- 雇入年月日
- 採用内定年月日
- 職種
- 1週間の所定労働時間
- 賃金月額
- 雇用期間(1年を超えて雇用する見込み)
- 事業主サイン
この項で大事なものは「1年を超えて雇用する見込みがあるかどうか」です。
ここで「無し」と書かれれば再就職手当を受け取ることができません。
会社としてはその辺は理解しているとは思います。
1ヶ月以内に再就職手当支給申請書を提出する
入社後、1ヶ月以内に下記の物を持参しハローワークで手続きを行なう
- 再就職手当支給申請書
- 雇用保険受給資格者証
- その他指示されたもの
※ハローワークよっては、再就職手当調査書や採用証明書、出勤簿の写しなどの提出が必要な場合もあります
再就職手当の書類提出は郵送でも構いません。
その場合の宛名は
「○○公共職業安定所 雇用保険担当者様 再就職手当申請書在中」と書きましょう。
※ここでは1ヶ月以内に提出しなければならないと書いていますが、1ヶ月を過ぎて提出しても問題ありません。
あくまで原則として1ヶ月以内に提出です。ですが雇用保険関連の給付金については2年の時効期間が設けられています。就職日より2年以内であれば「再就職手当」を申請することができます。
・雇用保険2年の時効について (出典:ハローワーク)
原則は1ヶ月以内なので、なるべく早めに提出しましょう。
支給決定通知書が届き再就職手当が口座に振り込まれる
再就職手当申請書を提出してから1ヶ月以内に「就業促進手当支給決定通知書」という封書が届きます。そこには再就職手当の支給が決定したことと、支給金額が明記されています。
その封書が届いてから1週間以内に(失業手当で指定していた)口座へ振込まれます。
※繫忙期などで1ヶ月を過ぎても封書が届かない場合もあります。
再就職手当のQ&A
再就職手当に関してのQ&Aです。
項目をクリックすると下に移動します。
- 再就職手当は契約社員、派遣やパート・アルバイトでももらえるの?
- 起業・独立した方でも再就職手当を受け取ることができる
- 給付制限期間中に就職が決まった場合はどうなるの
- 給付制限期間中の1ヶ月目で知人の紹介による会社の内定を得た場合
- 再就職手当の期限内に申請できなかった場合(1ヶ月以内)
- 再就職手当を受け取ってからすぐに退職した場合
- 再就職手当申請中に退職した場合
- 再就職先後に離職前の賃金より低い場合は「就業促進定着手当」が受けられる
再就職手当は契約社員、派遣やパート・アルバイトでももらえるの?
再就職手当の要件を満たしていれば再就職手当を受け取ることができます。
雇用保険の加入条件、1年以上継続雇用の可能性があるのか気を付けましょう。
起業・独立した方でも再就職手当を受け取ることができる
自営や個人事業主として起業する場合でも再就職手当を受け取ることができます。
ただし開業届と1年以上の事業継続が証明できるものが必要です。
仕事が受注出来るのか出来ているのか、継続性がありそうかなどの判断材料が必要。
店舗を構える際の不動産契約や融資なども事業開始とみなされます。
事業開始にあたり当面収入が見込めない場合は、事業開始の動機や経緯、直近の売上や今後の業績予想、その他根拠を求められる場合もあります。
単に開業すれば何とかなるという「思惑」や「漠然とした根拠」だけでは再就職手当の対象にはなりません。
給付制限中に就職が決まった場合はどうなるの
給付制限期間中に就職が決まった場合、再就職手当を申請することで受け取ることができます。しかし再就職手当を申請しないという選択肢もあります。
給付制限期間中であれば失業給付をまだ1日も受け取っていないため、ここで使わなければ次回の就職先へ雇用保険受給期間を継続させることができます。いずれにしても就職が決まったらハローワークへ連絡し、どのようなメリットとデメリットがあるのか確認しましょう。
※給付制限期間中の最初の1ヵ月目はハローワーク又は職業紹介事業者の紹介であることが条件です。
給付制限期間中の1ヶ月目で知人の紹介による会社の内定を得た場合
再就職手当の条件では、給付制限期間中の1ヶ月目はハローワークか職業紹介事業者による就職に限ると書かれています。
ですが内定の場合は問題ありません。内定ではなく、あくまで働き始めた日(就職日)が最初の1ヶ月以内にあるかどうかです。
もし早期に内定が出た場合、給付制限1ヶ月過ぎるまで入社日を待ってもらうことも一つの方法です。
再就職手当の期限内(1ヶ月以内)に申請できなかった場合
入社日より2年以内であれば提出が遅れても問題ありません。
再就職手当の提出は原則1ヶ月以内です。ですが2年の時効期間があります。その間に提出しましょう。
ですが原則1ヶ月なので、1ヶ月過ぎてしまう場合は事前にハローワークへ連絡しましょう。
再就職手当を受け取ってからすぐに退職した場合
支給決定された後に退職したとしても特に問題ありません。その際、再度ハローワークで求職の手続きを行えば残っていた失業手当の支給を受けることができます。
手続きに行かなければ再就職手当のみで、残りの日数分はたとえ失業状態であったとしても受け取ることができません。
再就職手当とは、就職前日まで残った失業手当の70%もしくは60%の支給を受けるものです。
実際にはまだ30%か40%は残されているということです。
無駄にしないためにも、再度ハローワークで再開の手続きをとりましょう。
※再就職手当とは、自分自身の失業手当の中から支給されるものです。
再就職手当申請中に退職した場合
再就職手当を申請中に退職した場合は、すぐにハローワークへその旨連絡しましょう。
そしてハローワークで再度失業手当の再開の手続きを取ります。
何も連絡しない場合、そのまま支給決定の封書が届くかもしれません。
ですが、在籍確認等で支給決定されない場合もあります。
再就職手当はあくまで自分自身の失業手当の中から支給されるものです。
再就職手当が支給されても、されなくても、まだ失業手当は残されています。
再度手続きして、残りの失業手当を受け取るようにしましょう。
再就職先後に離職前の賃金より低い場合は「就業促進定着手当」が受けられる
再就職手当を受けている方が対象です。
就業促進定着手当とは、再就職先での6ヶ月の賃金が離職前の賃金より低い場合に支給される手当です。
その額は失業手当の支給残日数の40%もしくは30%。
詳しくは以下の案内をご覧ください。