雇用保険の各種給付について

就業手当について【図と例でわかりやすく説明】

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就業手当とは一体どういうものでしょうか。就業手当については大きな欠点があります。

平成15年までは失業保険を受けてる日に4時間以上のアルバイトをした場合、その日の支給はありませんでした。そして平成15年の5月から「就業手当」という新たな制度ができました。

これは、アルバイトした日についても失業保険の30%が支給されるようになるというものです。

ここまで見たら良い制度に思えますが、就業手当には大きな欠点があります。
それは、この就業手当を申請した場合は失業保険の支給残日数がその分減らされてしまうということです。

申請すれば失業保険の30%が受け取れる。だがその分減らされてしまう。
であれば、申請しないほうが良いでしょう。

申請しなければその日の失業保険の支給はありませんが、支給日数が減ることはありません。その分後ろに伸びるだけです。

就業手当を申請すると30%もらったために70%がもらえなくなってしまいます。
そしてこの30%の就業手当ですが、上限額が決まっており、平成29年8月現在1,820円です。

就業手当は必ず申請しなければならないということはありません。唯一メリットがあるとすれば、就職が決まった際、再就職手当に該当しない場合です。
以下では具体的な例をあげて就業手当について説明していきます。

 

就業手当と再就職手当の違い

就業手当は、再就職手当に該当しない場合にメリットがある手当です。

再就職手当とは、失業給付を受けてる間に就職が決まった場合に支給される手当です。
就業手当も同様ですが、要件が異なります。

参考リンク:再就職手当とは

条件の違い

再就職手当の場合

・支給残日数が3分の1以上。
・雇用される期間が1年を超えることが確実であること。

就業手当の条件

支給残日数が3分の1以上、且つ、45日以上
臨時的に就労した場合、安定した職業以外(請負、委任、1年以下の契約)で就職した場合

上記条件については細かなものは除いてあります。
簡単に言ってしまえば、就職先で1年以上長期で働ける可能性がある場合は再就職手当、短期で働く場合が就業手当となります。

支給金額の違い

再就職手当の場合

支給残日数が3分の2以上の場合、支給残日数×70%×基本手当日額
支給残日数が3分の1以上の場合、支給残日数×60%×基本手当日額

※上限支給額は6,070円(60歳以上65歳未満は4,914円)平成29年8月1日現在

就業手当の場合

働いた日×30%×基本手当日額

※上限は残っている支給残日数分です。
※上限支給額は1,821円(60歳以上65歳未満は1,474円)平成29年8月1日現在

再就職手当が基本手当日額の70%や60%出るのに対して就業手当はわずか30%です。
金額にしても上限でも1,821円にしかなりません。

再就職手当に比べて、就業手当の支給はかなり低くなります。

就業手当の具体的な支給例

・基本手当日額:5,000円
・所定給付日数:180日
・支給残日数:90日(仕事が始まる前日まで)
・働いた日:180日(6ヶ月))

就業手当の具体的な支給例

上記例の場合、180日の半分の90日分が就業手当の支給分に該当します。
90日分×30%×5,000(基本手当日額)=135,000円

135,000円が就業手当額になります。

就業手当を申請した方が良いケース

就業手当は申請しても申請しなくてもどちらでも構いません。
申請したくなければ申請しないことも出来ます。

では、どのようなケースで就業手当は申請した方が良いのでしょうか。

申請を考える判断基準

まず、失業保険を受け取れる期間は一部を除いて1年間と決められています。
退職の翌日から1年間が有効期限です。1年を過ぎてしまうと失業保険が残っていても切り捨てられます。

ケース1
上記の図のケースになります。
失業保険を受けている間に6ヶ月限定の臨時の仕事(1日4時間以上)が決まったとします。
その場合に大事な点は失業保険を受け取れる期間がどれだけあるかです。

6ヶ月の長期の仕事が決まった場合、仕事が終わる頃には既に失業保険の受け取れる期間である1年を過ぎることが考えられます。その場合は申請する方が良いと思われます。

事後申請になりますので、仕事を開始する前日にハローワークで相談を受けてください。
まだ90日残っている状況で臨時の仕事が決まりましたので就業手当を申請すれば135,000円もらえます。

もし1ヶ月で退職した場合、その時点では申請していないと思いますので、再度失業保険を再開することができます。

ケース2
失業保険を受けている間に2週間の臨時の仕事をする場合。
この場合は、失業認定申告書への仕事をしたという記入は必要ですが、就業手当を申請するのは損です。

申請した場合はわずかなお金しかもらえません(上限1,821円)。支給残日数も2週間分減らされます。
申請しなかった場合、その間の支給はありませんが、支給残日数が無くなるわけではありません
後ろにずれるだけです。

※ただし失業保険の受け取れる期間である1年を過ぎる場合は申請した方が良いです。

・アルバイト期間は2週間(14日間)
・日当は10,000円
・基本手当日額は5000円

その場合の就業手当は以下となります。
14日(働いた日)×30%×5,000円= 21,000円となります。
1日当たりでは、1,500円です。

日当10,000円に1,500円プラスされるので実際は11,500円の収入になります。
ですが、本来支給される予定の基本手当日額5,000円は支払われませんので、実際の日当は、11,500円-5,000円=6,150円になります。

せっかく日当1万円の仕事をしたにもかかわらず、6,150円の収入にしかなりません。

申請しなかった場合は、5,000円の失業給付はすぐにはでませんが日当1万円は入ってきますし、失業給付も後から支給されます。

就業手当について

就業手当の支給額、支給要件、手続きの方法

支給額

1日当たりの支給額:基本手当日額×30%

※上限支給額は1,821円(60歳以上65歳未満は1,474円)平成29年8月1日現在

支給要件

  1. 就業した日の前日における基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上であること。
  2. 再就職手当の支給対象とならない職業に就き、又は事業を開始したこと
  3. 離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと
  4. 待期期間が経過した後に就業し、又は事業を開始したこと
  5. 離職理由による3ヶ月の給付制限を受けた場合、最初の1ヵ月はハローワーク又は職業紹介事業者の紹介により就業したこと
  6. 受給資格決定(求職申込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと

以上の要件を満たした場合に再就職手当が支給されます。

手続き方法

就業手当の申請は、原則として4週間に1回ある認定日ごとに行います。
失業認定申告書のカレンダーに○印を記入し、併せて「就業手当支給申請書」を提出してください。

また安定した職業以外で就職が決まった場合など、就職した日以降失業認定を受ける必要のない方については、就職した日から次々と回認定日の前日までに代理人又は郵送によって申請しても差し支えありません。
※なお代理人による申請の場合、委任状が必要です。

就業手当支給申請書はハローワークでももらえますし、インターネットから印刷することもできます。

※ハローワークインターネットサービスより
リンク先:就業手当支給申請書

さいごに

就業手当については分かりづらい点が多いです。
就業手当は必ず提出する必要はないので、短期で仕事をしても提出しなければ良いだけ。
上記で説明しているように、わずかなお金しかもらえないからです。

再就職手当に該当しないような長期で就いた場合は、就業手当について申請を検討した方がよいでしょう。再就職手当に比べて額は少ないですが、支給残日数分は無駄にしなくてもよくなります。

いずれにしても、ケースバイケースなので、ある程度長い期間仕事をすることになったらハローワークで相談しましょう。少しでもお金を無駄にしないためにも

 

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