失業保険を早くもらえる一番の方法は離職理由の変更です。
離職理由によって、すぐに支給される場合と2ヶ月3ヶ月間の給付制限待たされる場合があります。
※2020年(令和2年)10月1日より、正当な理由がない自己都合により退職した場合であっても、5年間のうち2回までは給付制限期間が3か月から2か月へと短縮されました。
会社都合退職の場合はすぐに支給されるのですが、それ以外の場合が問題です。
ではどのような退職理由であればすぐに支給されるのか、退職理由の変更は可能なのか、また給付制限がつく場合どのように対応すればよいのかを説明していきます。
会社都合退職と自己都合退職(2ヶ月の給付制限)の違い
失業保険の手続きをする場合、すぐに支給される場合と2ヶ月待たされる場合があります。
それは離職票に書かれている離職理由によって判断されます。
実際に失業保険が支給されるタイミングですが、会社都合退職の場合は手続きからおよそ1ヶ月後。
どんなに早く手続きをしても受け取れるのはおよそ1ヶ月後です。
自己都合退職の場合は、2ヶ月の給付制限の給付制限があるため手続きからおよそ3ヶ月後。
それぞれ希望した銀行口座へ振り込まれます。
この1ヶ月と3ヶ月の差は大きいです。
給付制限がつくと退職してから3ヶ月も収入がない状況で就職活動しなければなりません。
以下、すぐにもらえる、また得になるケースを紹介します。
退職理由を変更してもらう
会社を退職後、会社より自宅に離職票が郵送されてきます。
離職票には1と2があり、離職票2に退職理由(離職区分)が明記されています。
離職票-2の右側には該当する退職理由に○がついています。これは会社側で記入するものです。
対象者 | 離職コード |
---|---|
特定受給資格者 | 1A, 1B, 2A, 2B, 3A, 3B |
特定理由離職者1 | 2C |
特定理由離職者2 | 3C, 3D |
自己都合退職 | 4D, 5E |
離職区分の詳細離職理由コード
会社を退職する理由はさまざまです。
会社都合退職の場合はすぐに支給されるため問題ありませんが、自己都合退職の場合が問題です。
実は自己都合退職に該当するものでも4つに分類されます。
「特定受給資格者」「特定理由離職者1」「特定理由離職者2」「一般受給資格者」です。
対象者 | 2ヶ月給付制限 | 給付日数優遇 |
---|---|---|
特定受給資格者 | なし | あり |
特定理由離職者1 | なし | あり |
特定理由離職者2 | なし | なし |
一般受給資格者 | あり | なし |
普通は本人と会社との間で退職理由を決定します。
ですが会社側で勝手に自己都合退職にするケースも少なくありません。
その場合はハローワークへ手続きする際に異議申立てを行いましょう。ハローワークが仲介役になり会社への連絡等を行なってくれます。
「特定受給資格者」と「特定理由離職者1、2」に該当すれば「失業保険をすぐに受けとることができる」のです。
主に下記理由に該当する場合は、ハローワークに相談することで変更される場合があります。
※ただし客観的に判断できる証拠が必要な場合もあります。(残業過多の場合はタイムシート等)
特定受給資格者に該当するケース
特定受給資格者は以下のように会社に原因があるものです。
- 給料の遅延(給料の3分の1を超える額2ヶ月以上支払われなかった)
- 給料が以前に比べて85%未満になったため離職(減額されることが想定できなかった)
- 残業過多(3ヶ月で45時間以上、1ヶ月で100時間以上、又は2ヶ月以上平均80時間など)
- 事業主が側が、妊娠中、出産後、この養育中、家族の介護等を行なうものに対して不利益な扱いをした
- 有期雇用契約で3年以上雇用されて働いているにもかかわらず更新されなかった
- 上司や同僚から著しい冷遇や嫌がらせを受けて退職(セクハラ、パワハラ等)
退職の意志はなかったが、退職せざる負えない状況に陥った場合です。
残業が多い場合や、セクハラ、パワハラ等で退職を余儀なくされた場合もこれに該当します。
過度に働き過ぎると、過労死やうつ発症などのリスクが高まります。
特定理由資格者に該当するケース
自己都合退職ではあるが、やむを得ない理由がある場合はこれに該当します。
主に以下のような内容による退職です。
- 契約期間満了後、次の更新がない場合
- 体力の不足や心身の障害、疾病、けが、視力、聴力、触覚の減退等による離職
- 妊娠・出産・育児等により李書k水、雇用保険(失業保険)の受給延長措置を受けた人
- 父または母の死亡、疾病、けがのため介護するため離職(家庭の事情が急変した場合)
- 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となり離職
- 何らかの理由により通勤が困難になって離職(夫の転勤など)
病気やケガのために退職した場合や、両親の介護のために退職したなどのケースです。
必ず認められるというわけではありませんが、ハローワークに相談することで2ヶ月待たずにすぐに支給される場合もあります。
職業訓練に通う
職業訓練に通うことでいくつかのメリットを享受することができます。
・無料で職業訓練に通うことができる
・訓練終了まで失業保険が延長される
・2ヶ月の給付制限が解除される
・交通費・受講手当(上限2万円)が支給される
※上記メリットは受講指示で通う場合
職業訓練にはさまざまなコース内容があります。
パソコンや経理の事務系からWEB、プログラミングなどのIT、介護、機械、電機等々。
インターネットでも職業訓練は検索できますし、ハローワークに行けばパンフレットや相談窓口もあります。
普通であれば数十万円かかる学費も無料で通うこともできますし、訓練期間は終了日まで失業保険を受けながら通うことができます。1年コースであれば1年間失業保険を受けられるということです。
さらに職業訓練初日より失業保険の支給が始まるため、2ヶ月の給付制限が解除されます。
ただし「受講指示」を受けた方が対象になるため、自分が受講指示の対象かどうかを確認する必要があります。
参考:職業訓練の「受講指示」「受講推薦」「支援指示」について
職業訓練はタイミングが大事
職業訓練はタイミングがとても大切です。「受けたい時に受けたい訓練コースが開催されるか」です。
■職業訓練入校までのスケジュール
職業訓練の申込が始まるのがおよそ2ヶ月前。その後に選考(申込選考や面接選考)があり、合格が決まるのがおよそ訓練開始1ヶ月前。できれば離職前にある程度のスケジュールを組んで取り組むべきです。
給付制限期間中は思いっきり仕事をする
ハローワークへ失業保険の手続き後、2ヶ月の給付制限が付いた場合はどうすれば良いのか?
実際に自分の口座に振り込まれるのは3ヶ月も先になります。
3ヶ月間無収入で暮らして行かなければなりません。
貯蓄があればのんびりと出来るかもしれませんが、そういうわけにもいかないでしょう。
給付制限期間中に何も出来ないかといえばそうではありません。
この2ヶ月間は自由な時間。もちろん仕事をすることも可。
給付制限期間中は「思いっきり仕事をする」のも良いでしょう。
フルタイムの正社員、契約社員、パート、アルバイトでも問題ありません。
とにかく2ヶ月の給付制限期間が過ぎるのを待ちます。
そのまま就職して再就職手当を受け取るのも良いですし、給付制限期間が過ぎたら離職するというやり方も出来ます。特にこの間は「働いても問題ない」ということです。
2ヶ月間短期のアルバイトをして、その後失業保険を受け取るというのが一番ベストかもしれません。
ただし認定日もありますので、その際には今働いていることハローワークに報告する必要があります。
働いているということは、一時的に失業保険はストップした状態。しかし2ヶ月の給付制限期間は進んでいます。離職したらハローワークにその旨報告し、再度失業保険の手続きを進めるという流れです。
ただし働くことで就職活動がおろそかになることを認識する必要があります。
2ヶ月待たされるなら失業保険の手続きをしない
自己都合退職で2ヶ月の給付制限が付く場合は、そもそも「失業保険の手続きをしない」という選択肢もあります。
ハローワークで失業保険の手続きをして失業保険を受け取ってしまうと、今までの雇用保険加入期間リセットされてしまいます。
雇用保険は加入期間が長ければ長い程、長く受け取ることができる制度です。
さらに会社都合退職の方が自己都合退職よりはるかに受給期間が優遇されています。
自己都合退職の場合、2ヶ月給付制限で待たされるだけでなく受給期間も短くされているのです。
であれば、いざというとき(会社都合退職)のために使わないでおくのも一つの手です。
■会社都合退職の場合の給付日数
被保険者であった期間 | 6ヶ月以上1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ー |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
■自己都合退職の場合の給付日数
被保険者であった期間 | 6ヶ月以上1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
全年齢 | - | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
退職前はなるべく残業する
失業保険を早くもらう方法とは関係ありませんが、お得な情報をひとつ。
離職前はなるべく多く稼ぐことをお勧めします。とにかく残業や休日出勤してお金を稼ぐこと。
なぜかというと、失業保険(正確には失業給付の基本手当)を計算する上で元になる金額は「離職前の6ヶ月の平均賃金」だからです。
6ヶ月の賃金を1日平均でいくらと算出します。その額に対して失業保険(基本手当)の額が決定するわけです。
離職前に少しでも多く稼いだ方が、結果的に多くの失業保険を受け取れるということになります。
さいごに
失業保険を早く受け取るには何をすれば良いかを説明してきました。
退職後、すぐに新しい仕事が決まりそうであれば失業保険の手続きはしないほうが良いかもしれません。
「とにかく退職後1ヶ月間は全力で就職活動する。その結果しだいで手続きするかを検討する」
雇用保険の加入期間は、1年間、間を空けなければ足すことができます。リセットされることはありません。
どうせ失業保険を受取るなら、会社都合退職の時にしましょう。
会社都合退職の方がすぐに支給も受けられますし、加入期間によって多く支給を受けることができます。
本当は離職せずに失業保険など受けないのが一番良いのですが。。。