パートやアルバイトであっても雇用保険の加入要件に該当していれば加入することができます。
アルバイトしている本人が「雇用保険に加入したくない」と言っても、会社側では加入する義務があります。
雇用保険というのは、わかりやすく言えば失業保険のことです。
雇用保険は退職した際に「失業保険」として受け取れるもの。
"雇用保険は加入して損はありません"。
ですが、個人の条件や事業所の規模や業種によっては加入できないこともあります。
それは以下のような場合です。
- 雇用保険の加入要件に該当しない
- 本業が学生である
- すでに雇用保険に加入している
- 5人未満の農林水産業には入れない場合がある
では細かく見ていきます。
雇用保険の加入要件に該当しない場合
雇用保険に加入するには「2つの要件に該当する」必要があります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 同一の事業所に継続して31日以上の雇用が見込めること
この要件に該当しない場合は雇用保険に加入することができません。
例えばコンビニでアルバイトをする場合。1日4時間、週5日行う場合は、週20時間です。
1ヶ月限定でなければ雇用保険に加入することになります。
1日3時間で週4日の場合は、週20時間未満になるため雇用保険に加入することはできません。
※まともな会社であれば、アルバイトやパートであっても「雇用契約書(労働条件通知書)」を書面にて渡されます。
その雇用契約書には、契約内容や契約期間、勤務時間、休日、賃金などが明記されています。
本業が学生である場合
大学生などは雇用保険の条件に該当していても加入することができません。
その理由は、「学業が本業」であるからです。
学業が本業であるので仮に退職したとしても「失業した」という状態にはなりません。
雇用保険は、「労働者が失業」した際の生活保障です。
学生も仕事をしていたら労働者ですが、あくまで本業は「学生」であることから雇用保険の対象にはならないのです。
以下の場合は「学業が本業にならない」ため、雇用保険に加入することができます。
- 定時制の学生
- 社会人大学生(通信制、夜間)
- 卒業予定で卒業後もその会社で働く場合
「本業がどこにあるか」で分かれます。
既に雇用保険に加入している場合
雇用保険の加入は1人一つが原則です。
1人が複数雇用保険に加入することはできません。
そのため雇用保険被保険者番号(雇用保険加入の際に付けられる番号)は1人に一つです。
1箇所で既にアルバイトをしており(そこで雇用保険加入中)、もうひとつ別のアルバイト先で雇用保険の加入要件を満たしている場合これに該当します。(ダブルワーク)
そこで雇用保険の条件に該当しても対象にはなりません。
その場合は既に加入している旨をアルバイト先に伝えなければなりません。
会社側では知らずに雇用保険の加入手続きをしてしまいます。
※その場合は給料が良い方へ変更することは可能です。
下記の記事も参考にしてください。
参考:ダブルワークしている場合の雇用保険Q&A
5人未満の農林水産業には入れない場合がある
原則として、1人でも従業員を雇い入れたら雇用保険(労災保険も同様)に加入しなければなりません。この事業所のことを当然適用事業者といいます。
ですが一部例外があります。
それが暫定任意適用事業者と呼ばれるものです。
区分 | 暫定任意適用事業/任意(包括)適用事業 |
---|---|
労災保険 | 1.個人経営で5人未満の労働者を使用する農業 一定の危険・作業を主として行なうもの、および農業関係の特別加入をしている事業主が行なうものを除く暫定任意適用事業 2.個人経営で5人未満の労働差者を使用する水産業 総トン数5トン未満の漁船、または特定水面で主として操業 3.個人経営の林業で、常時には労働者を使用せず、かつ年間使用述べ300人未満 |
雇用保険 | 個人経営で5人未満の労働者を使用する農林水産業の事業 |
雇用保険の場合は、農林水産業に限り「5人未満の従業員であれば加入しなくても良い」ということになります。
任意なので加入しても良いし加入しなくても良いということです。そこは会社の判断です。
※農林水産業とは、農業、林業、漁業のこと。
雇用保険に入るメリット
雇用保険に入ることで、さまざまなメリットを受けることができます。
失業保険が最たるもの。ですがそれだけではありません。
以下のようなメリットがあります。
- 失業期間中は失業保険を受け取れる
- 失業期間中に就職が決まった場合、再就職手当を受けられる(最大70%)
- 失業保険を受けても、再度1年以上雇用保険に加入すれば失業保険の資格が得られる(会社都合退職の場合は6ヶ月)
- 無料で職業訓練に通うことができる(さらに失業保険の延長もあり)
- 教育訓練の20%給付や専門実践教育訓練(年間最大56万円支給、失業保険8割支給※2018年1月1日より拡充)が受けられる
- 育児休業や介護休業でも給与の3分の2の給付を受けることができる
- 受け取った失業保険には税金がかからない(確定申告の必要はない)
雇用保険に加入することでさまざまなメリットを受けることができます。
詳細は以下のページで確認してください。
・雇用保険(失業保険)はいくらもらえるの?(図と例で解説)
・雇用保険(失業保険)はいつまでもらえるの?
・再就職手当とは(失業保険)
・知らないと損をする 職業訓練 のすべて
・教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金を学ぼう
さいごに
普段必要ないのが雇用保険。
ですが、いざ失業した場合は大きな生活保障になります。
自己都合退職(やむを得ない場合を除く)の場合は2ヶ月3ヶ月間の給付制限が付くため、実際に受け取れるのは3ヶ月後になります。
※2020年(令和2年)10月1日より、正当な理由がない自己都合により退職した場合であっても、5年間のうち2回までは給付制限期間が3ヶ月から2ヶ月へと短縮されました。
違法なことですが、会社によっては(特に零細)意図的に加入させない場合もあります。
その場合はハッキリと、なぜ雇用保険に加入していないのかを確認しましょう。
雇用保険に加入している場合は、所得税と共に「給与から天引き」されています。
給与明細からも確認することができます。引かれていなければ加入していないということです。
雇用保険料は会社と労働者でそれぞれ負担します。
個人の負担額は給与のおよそ0.5%~0.6%(2022年度)です。
10万円の給料なら月に500円から600円程度。それほど高いわけではありません。
加入できる条件であれば、加入すべきものです。