ハローワークは会社を辞めた人が行くところだと思っていませんか?
ですが、今働いている人も利用できる無料の機関です。
ハローワークは全国に554ヵ所あり、正式名称を「公共職業安定所」といいます。
1日推定で17万人の利用者がいます。
新卒で入社してそのまま定年退職まで過ごせば、ハローワークは関係ないところかもしれません。
では、ハローワークって一体何なのか?何をしてくれるところなのか、その中身を紹介していきます。
ハローワークの大きな役目は「失業保険」と「求職者支援」です。
会社を辞めた際に手当を受けるものが失業保険、そして新たに仕事を探すための求職支援。
それ以外にも職業訓練等さまざまな就職支援を実施しています。
会社を辞めた人はもちろん、現在も仕事をしている人も利用できるキャリアアップセミナーや給付金等を利用することができます。
ハローワーク求人にはブラック企業が多いなど言われていますが、その辺りはどうなのか?
まずはハローワークではどのようなサービスを提供しているのかを見ていきます。
ハローワークの中身。ハローワークは何をやっているのか
ハローワークは以下のように部門ごとにサービスが分かれています。
それぞれの部門について見ていきます。
- 雇用保険課
- 職業相談部門
- 職業訓練部門
- 専門援助部門
- 事業所部門
- 生活支援
雇用保険課
雇用保険課は「失業保険」の手続きを行なう窓口です。正式名称は雇用保険ですが、一般的に広まっているのは失業保険という言葉です。
失業保険とは仕事を失くした人の生活支援です。就職活動している間に受け取ることができます。
失業保険を受け取れる金額と期間は、雇用保険の加入年数や退職理由、年齢などによって異なります。
最低でも90日は受け取ることができます。詳しい内容については以下を参照してください。
・雇用保険(失業保険)はいつまでもらえるの?
失業保険受給中は月に一度、失業状態であることを確認するための「認定日」が設けられています。
早期に就職が決まった場合は再就職手当(最高で失業保険の70%)を受け取ることができます。
職業相談部門
職業相談部門では就職を希望している全ての人に対して職業相談や求人情報の提供を行なっています。
退職した人ばかりではなく、在職中の方、フリーターやニート、母子家庭、生活保護者、高齢者なども対象です。
職業相談窓口では専任の相談員がおり、仕事の相談を受けたり、求人情報等の提供を行っています。
併せて求人検索パソコンも複数台あるため、ハローワークで求人検索することも可能です。
また就職するために必要なセミナー(履歴書、職務経歴書などの応募書類の作成方法、面接対策、コミュニケーションセミナーなど)も行なっています。
職業訓練部門
新しく仕事に就く際に必要な技能や知識を習得するための「職業訓練」の相談や手続きはこちらの部門で行います。
職業訓練は事務系から技術系まで幅広い分野のコースがあり、その際の受講料はほとんどが無料です。3ヵ月から2年コースまであります。
職業訓練は大きく2つの制度に分かれています。
失業保険のある方向けの「公共職業訓練」とない方向けの「求職者支援訓練」です。
受講料も無料ですが、さらに失業保険の延長を受けながら通う事もできますし、失業保険がない方で一定の要件を満たしている方は「職業訓練受講給付金(月10万円の支給)」を受けながら通うこともできます。
詳しい内容については以下を参照してください。
・職業訓練について(知らないと損をする 職業訓練 のすべて)
専門援助部門
専門的な援助を必要とする方(学卒、子育て女性、障害者、外国人)に対する就職支援を行なっています。
特に力をいれているのが、若者と子育て女性の就職支援です。
新卒者への支援としては大学等と連携し、学校訪問による未内定者への担当者制の職業相談や紹介、求人開拓を行なっています。
マザーズでは子供連れでも来所しやすいような環境を整備していたり、仕事と子育てが両立しやすい求人情報の収集や提供を行なっています。
地域に密着しているため、保育園等の情報も集めやすくなります。
また障害者支援に対しても障害特性に応じた職業紹介や求人開拓等を実施。最近は精神障害者や発達障害者など、特に支援が必要な人が増えている傾向にもあります。
事業所部門
一般企業はハローワークに無料で求人を出すことができます。民間の企業に求人を出す場合は料金を取られますが、ハローワークに求人を出せば無料です。
そのため、ハローワークでは民間の求人に比べて、中小零細企業の求人割合が比較的多くなっています。
他にも企業向けに助成金などの窓口もあります。
「雇用調整助成金」「特定求職者雇用開発助成金」「トライアル雇用助成金」「障害者等の雇用環境整備関連」「キャリアアップ・人材育成関連」「労働時間・賃金・健康確保・勤労者福祉関連」など企業向けに様々な助成金の受付等を行っています。
生活支援
生活に困っている方の窓口があり、自治体と連携して事業を行なっています。
失業して生活に困っている場合など「生活福祉資金貸付制度」があります。セーフティネットの一つとして、平成21年10月に、同制度が大幅に見直され、継続的な相談支援とともに、生活費や一時的な資金の貸付けを行う「総合支援資金」が設けられました。平成27年4月からは経済的に困窮する方の自立を支援する生活困窮者自立支援制度との連携も始まっています。
【対象】
必要な資金を他から借りることが困難な「低所得者世帯」
障害者手帳などの交付を受けた人が属する「障害者世帯」
65歳以上の高齢者が属する「高齢者世帯」
継続的な相談支援と生活費などの資金貸付を行う「総合支援資金」もあります。
生活に困っているようであれば、住所管轄のハローワークで相談を受けることをお勧めします。
ハローワークを利用する上でのメリット・デメリット
ここまでハローワークは何をする場所なのか、どういうサービスを提供しているのかを説明してきました。
そしてハローワークを利用するにあたってのメリット、デメリットを書いていきます。
<メリット>
・ハローワークは誰でも利用することができる
・職業訓練や各種セミナーが受けられる
・求人数が多い(主に中小零細企業)
<デメリット>
・ハローワークの求人に応募するには紹介状が必要
・開いている時間が短い
・ハローワーク求人はブラック企業が多い
以上の内容について下記で詳しく説明していきます。
ハローワークは誰でも利用することができる
ハローワークは国が行なっている事業なので、誰でも無料で就職支援等を利用することができます。
「誰でも」「無料で」これが最大のメリットです。
民間の就職支援会社の場合は、全員が就職支援を受けることはできません。
就職できそうな人(お金になりそうな人)を選んで支援します。
当たり前ですが就職させないと一銭もお金にならないからです。
そのため、若い人や高度なスキルを持っていないと相手にされない可能性があります。
ハローワークは国の事業ですので利益を上げるものではありません。(ですが最近は就職率等のノルマもあり)
高齢者であっても、スキルがなくても職業支援を受けることができます。
職業訓練や各種セミナーが受けられる
職業訓練を受けて専門的な技術を身につけることができます。期間も3ヶ月から半年のコースが多く無料で受けられるのがメリットです。
民間で同じような講座を受ける場合は何十万円もかかるでしょう。それが無料で受けることができますし交通費や手当の支給まであります。
ただし入校選考があるため、全員の方が希望の訓練を受けられるわけではありません。
職業訓練以外でも教育訓練給付制度というものがあります。こちらは「一般教育訓練」と「専門実践教育訓練」に分かれています。
一般教育訓練に該当する講座を受講した場合、費用の20%の支給を受けられるもの。専門実践教育訓練は離職者向けですが、最大で毎年48万円の支給を受けることができます。
詳しい内容については以下を参照してください。
・教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金を学ぼう
・職業訓練とは(知らないと損する職業訓訓練のすべて)
・職業訓練校のコース一覧
求人数が多い(ただし主に中小零細企業)
ハローワークが提供する求人は日本一です。全国の求人から探すことができます。
沖縄に住んでいても、北海道に住んでいても全国同じ求人情報を検索して見ることができます。
正社員等のフルタイム求人はもちろんのこと、パートやアルバイトの求人も豊富です。ですが前述したとおり、中小零細企業の割合が高めで、地域密着型でもあります。
インターネットからでも検索することもできます。ハローワークインターネットサービスでは全国でおよそ77万件の求人掲載がありました。(2017年10月現在)
ハローワークに置いてある「求人検索機」はリアルタイムで求人情報が更新されますが、インターネット閲覧用は1日1回(早朝)です。
民間の求人サイトに掲載を依頼すると数十万から100万近く費用がかかりますし、掲載期間も限られています。ハローワークの場合は無料で求人が出せますし、求人掲載の延長も期限なく行なうことができます。
ですが常に求人を出し続けている企業もあります。このことは利用者にとってはデメリットです。
年中募集している求人は何かしら問題を抱えている場合がほとんどでしょう。普通は必要な時に必要な人数の求人を出すものです。
その中にはすぐ人が辞めていくようなブラック企業も当然あるでしょう。良い人材しか取らないということで面接で落とされ続けている利用者もいるのです。
誇大広告のような内容(仕事の内容に比べて給料が高いなど)の求人があるのも事実なので、その場合は職業相談窓口で相談すると良いでしょう。
公務の仕事に就きたい方はハローワークの求人を利用した方が良いかもしれません。民間の求人情報誌には出ないような求人も出ています。
ハローワークの求人に応募するには紹介状が必要
ハローワークに出ている求人へ応募する場合は、ハローワークの紹介状が必要です。
紹介状というのはペラペラ紙1枚で、「この求人に対してこの方を紹介します」という内容になっています。そしてその裏面には選考結果をハローワークに通知する内容のものが書かれています。
ハローワークインターネットサービスで良い求人を見つけても、必ずこの「紹介状」を受け取らなければいけません。
ハッキリ言ってこれは面倒です。わざわざハローワークの窓口まで行かなければならないからです。
これはデメリットですが、メリットに変えていきましょう。
窓口に行ったら応募者がどれくらいいるのか、この会社は何か問題がないかを聞いてみましょう。求人票に書かれていない事がわかるかもしれません。
開いている時間が短い
ハローワークの開庁時間は通常以下の通りです。
・平日:8時半~17時15分まで
ですが場所によっては夜間や土曜日も業務を行っているところもあります。
・平日:8時30分~19時まで(特定の日のみ)
・土曜:10時~17時まで(月に2回など)
普通の仕事をしている場合はなかなか利用することができません。
どこのお役所もそうですが平日お休みがあっても構わないので、土曜か日曜いずれかの日は業務を行なってほしいところです。
ハローワーク求人はブラック企業が多い
よく言われているのがハローワークの求人は「ブラック企業が多い」ということです。
ハローワークの求人窓口では最低限のチェックしかされません。最低賃金を上回っているか、業務内容に問題はないか、雇用保険や社会保険の加入明記はあるのか等。
それをクリアすれば求人を出すことが出来るわけです。
ですが、働いて見たら実際は求人内容と違っていた!!というのがブラック企業の特徴。
求人票に書かれている内容は「雇用契約書」ではありません。実際に大切なのは「雇用契約書」です。ここを理解する必要があります。
普通の会社なら人を採用する場合は雇用契約書を作成し本人へ渡します。給与はいくら、休日はいつなどの具体的な内容です。この雇用契約書と実際の勤務状況や待遇が異なればブラック企業と言えるでしょう。
ハローワークが問題なのは、トラブルが多い求人を常に載せていることです。最近ようやくブラック企業対策をとっているようですが、もっと早くからやるべきでした。
常に求人を出している企業や苦情が多い求人に対して調査することが大切です。
まとめ
ハローワークについて私が知り得る情報を色々と書いてきました。
ハローワークは失業した際、またはスキルアップが必要な時に利用する場所です。ひとつの会社に長く勤めている場合は必要ないところです。そういう意味では本来利用しないほうが良い場所と言えるでしょう。
日本は終身雇用制が徐々に崩壊し、女性も高齢者も働かなければならない世の中に変わりつつあります。
民間企業では利用価値(転職してくれそうな人)がないと相談にも乗ってくれません。ですがハローワークでは誰でも利用することができます。
もちろん、生活保護者やニート、引きこもりの長い方でも就職できるような担当者制のプログラムを組んでいます。1人の担当者が長い期間、並走しながら就職までを支援します。
とにかく一歩踏み出したいと思う方には、利用価値があるところではないでしょうか。
何も会社を辞めた人だけが行くところではありません。在職中の方でも利用することはできます。資格取得する際に費用の負担をしてくれる制度もあります。せっかくこのような機関があるのですから、大いに利用してみてはいかがでしょうか。